永山瑛太「気づかないうちに削られていってしまうのではないかと…」最新作「身代わり忠臣蔵」で共演した俳優仲間を心配

東京ウォーカー(全国版)

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忠臣蔵を描いた作品のなかで「1番情けない大石内蔵助になったと思います」

――撮影で印象に残っていることがあればお聞かせいただけますか。

【永山瑛太】やはりムロくんと一緒のシーンはどれも印象深いですが、その中でも孝証と大石の出会いの場面の撮影は強烈に覚えています。溺れている孝証を大石が助けるのですが、その時に僕が思いきりムロくんをビンタしたんです。けっこう強めに叩いたので、自然と僕らのプライベートな関係性がお芝居に出てしまったんじゃないかと、ちょっと焦りましたね(笑)。

撮影=三橋優美子


――相手がムロさんだからこそ、思いきりできてよかったというお気持ちもあるのでは?

【永山瑛太】それはありますね。ほかの俳優さんだったら「痛かった!」って怒ったかもしれない(笑)。ただ、僕の中では人が死にそうになっているときに中途半端な叩き方はしないだろうと、本気でビンタするはずだと確信していたんです。それを彼ならきっとわかってくれるという安心感もあって。でも、今の痛かったよなと心配になったので、カットがかかったあとに「首とか大丈夫だった?」って聞いたら「心配ないよ」と言ってくれてホッとしました。

――強烈な出会いのあと、孝証と大石が友情を築いていく展開もいいですよね。二人がお酒を飲むシーンが印象的でしたが、ムロさんとゆっくりお酒を飲む機会があったらどんな話をしたいですか?

【永山瑛太】向かい合って話をするというよりは、何かを共有したいですね。話をしないでひたすらおいしいものを一緒に食べるだけでもいいのかなって。うまく言えないんですけど、あんまり真正面に座ってほしくないというか、横に座る関係性でいたいなと思います。

撮影=三橋優美子

映画「身代わり忠臣蔵」の場面写真(C) 2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会


――話は変わりますが、ドラマ「時をかけるな、恋人たち」では23世紀の未来からやってきたタイムパトロール隊員の役を演じてらっしゃいました。歴史上の人物も未来人も想像力を膨らませながら挑まれたかと思いますが、現代に生きる人物ではない役を演じる際に何か意識されていることはありますか?

【永山瑛太】歴史上の人物だからとか未来人、現代人だからどうのというのは特に意識していないです。どんな役も想像力は必要ですしね。ただ、未来人となると、“ちょっと変な人”でもアリなんじゃないかなとは思いました。「時をかけるな、恋人たち」で演じた翔(かける)は、吉岡里帆さん演じる廻(めぐ)の過去の記憶が消されているのを知っていて、記憶が消される前はお互いに思い合っていたので、ずっともどかしい思いを抱えているんですよね。

きっと想像を絶するほどモヤモヤしていたはずで。だからちょっとオーバーに演じたところはあります。上田誠さんの脚本はおもしろいからサラっと演じても成立するのに、僕はもしかしたら余計なことをしすぎたかもしれない(笑)。

――翔はキャラクターが濃くて魅力的でしたし、空回りすればするほど切なさが増してキュンとしました。

【永山瑛太】そう思っていただけたならよかったです。翔も大石も “自分だったらこう演じる”みたいなことを楽しみながら演じていたので、結果的に翔は変な未来人になったし、大石内蔵助は忠臣蔵を描いた作品のなかで1番情けない人物になったと思います(笑)。

次に撮ってみたいのは“3人の俳優の物語”

――またまた話は変わりますが、昨年行われた映画「ゆれる」の上映イベントで西川美和監督とオダギリジョーさんのトークショーを拝見したのですが、西川監督は何度もテイクを重ねて素材を多くするタイプ、オダギリさんは監督として作品を撮るときはテストもなしで本番でいきなりカメラを回すタイプ、というお話をされていました。永山さんも2022年に監督として短編映画「ありがとう」を撮られていますが、主演の役所広司さんが「テストはほぼなしで、いきなり本番。ほとんどが一発OK」とインタビューでコメントされていたので、オダギリさんと同じ手法だったことがわかって興味深かったです。

【永山瑛太】テストや本番などを何度も繰り返すと、一度やったお芝居をなぞろうとしたり、逆に“さっきとは違うお芝居をしよう”と意図的になったりするんです。ところが、いきなりカメラを回すやり方だと、予想もつかないようなアドリブが生まれたりするし、俳優も新鮮な気持ちで演じられるので、「ありがとう」の撮影ではいきなり本番というスタイルでやらせてもらいました。ただ、段取りのあとにテストなしで本番だと、スタッフさんが困るという問題はありましたね。

撮影=三橋優美子


――確かに、俳優の動きを事前に確認できないとカメラマンさんや照明部、録音部のスタッフさんは大変かもしれないですね。

【永山瑛太】そうなんです。カットをかけたあと、音が録れてなかったなんてこともあったので、テストが大事なことはわかっているのですが…。それでもまた監督として作品を撮る機会があったら、わがままを言って同じやり方をすると思います。“え!さっきのでOKなの?”と、俳優やスタッフさんに思わせるのも演出のひとつだと思いますし、「何度も演じるのはキツイよ」と言われる心配もないですしね(笑)。

俳優の立場でいえば、急にカメラを回すやり方も平気だし、テイクを重ねていくやり方だったら“何度もやらせていただけるのはありがたい”と思えるし、監督のスタイルに合わせるのは全然苦じゃないです。

――ちなみに次はどんな作品を撮りたいですか?

【永山瑛太】売れない俳優と、以前は売れてけど今は引退している元俳優と、売れているのに死にたいという願望を抱えている俳優が主人公で、それぞれの物語が交錯していくような映画を撮りたいです。テーマとしては“俳優とはなんなのか”みたいなことで、イメージは風間杜夫さんが主演を務めた「蒲田行進曲」に登場する俳優たちの物語のようなものを考えています。

ただ、今ある脚本だと製作費に何十億とかかかりそうなので、実現できるようにもう少し時間をかけて練らないと(笑)。とにかく楽しみながら表現者という仕事を続けていきたいですね。

撮影=三橋優美子

映画「身代わり忠臣蔵」のメイン写真(C) 2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会


取材・文=奥村百恵

◆スタイリスト:松田瑞穂
◆ヘアメイク:波多野香織

(C) 2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会

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