イジメの復讐に燃える少女を演じた山田杏奈の魅力とは!? 映画「ミスミソウ」インタビュー

関西ウォーカー

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映画『ミスミソウ』の主演・山田杏奈と内藤瑛亮監督に話を伺った


「ハイスコアガール」「でろでろ」などで知られる漫画家・押切蓮介の伝説のコミック「ミスミソウ 完全版」。ファンの間で人気がありながらも、映像化不可能とまで言われた本作の実写化に挑戦した映画「ミスミソウ」。主人公の野咲春花を演じる山田杏奈、少年少女を主人公としたクライムサスペンスの名手として名高い内藤瑛亮監督に話を伺った。

本作の主人公、東京から田舎に転校してきた山田杏奈演じる野咲春花は部外者として壮絶なイジメを受けていた。同じく転校生のクラスメート清水尋也演じる相場晄の支えに耐えてきた春花だが、エスカレートするイジメに家が放火される事態に。両親が命を落とし、妹が重体という悲惨な出来事に、遂に春花の心は崩壊し、春花はイジメグループに復讐を開始するというストーリー。

主人公の野咲春花を演じる山田杏奈


映画「ミスミソウ」は元々内藤監督ではなく別の監督で進んでいた企画。クランクインの1か月前に急きょ内藤監督に本作の依頼があったという。引き受けた内藤監督は、すでにオーデションで主役が決定していた山田とそのまま対面することになったと語る。山田は内藤監督の「ライチ☆光クラブ」「パズル」を鑑賞していて、どんな監督かと思っていたが、実際に会ってみると作品からは想像できないくらい穏やかで優しそうな人柄にびっくりしたという。

「監督に準備期間が短い中けど私だから撮ってみたいって言ってもらえて、すごい嬉しくて頑張ろうと思った」と山田は当時を思い出すように答えた。

映画の面白さをストレートに表現できたという内藤監督


その監督の穏やかさとは逆に、撮影現場はドタバタで時間との戦いだったという本作。スタッフが集まって話し合う間もなかったので小道具の準備が伝わってなかったりと苦労も多かったという。しかし、内藤監督は「映画は話し合うにつれて色々な意見が出てきて、企画を練るうちに本来の面白さが捻じ曲がることがある」と映画製作の現場を指摘。「この映画はこうしたら面白いに違いないという想いをストレートに表現できました。映画学校の同期にも内藤のやりたかったことができて1番よかった」と評価されたという。

山田は春花の復讐に繋がる怒りに共感できるという


山田は自身の役について「春花はセリフや言葉で説明することが少なくて、両親が殺された後の怒りに染まってしまい、ひとつ越えてしまった境地を目力、表情だけで伝えることを意識した」と語る。「原作の漫画を読んだ時から春花という役について考えていて、思った感じでできた」と言う山田。無邪気で明るい役より何かあったのではと思う役の方がピッタリくるという彼女は「春花には理解できることが多くて、復讐に繋がってしまう、その怒りとかは共感できる部分が多かった」。また本作でのラストシーンを「復讐の過程で自分を傷つけていく春花のラストで見せる表情は大事にしていた」と一番大切にしてきたのだという。その甲斐あって周囲からもこのシーンを褒めてくれることが多かったという。

内藤監督は今作で自身の問題に向き合えたと語る


内藤監督は山田を「会ったときにはもう役を掴んでいたという印象でした。キャラクターのことを一番理解しているのは俳優自身です。役に関して余計な言葉かけをしてしまうと、豊かな表現が損なわれてしまうことがあります。山田さんは信頼して任せて大丈夫だという認識だった」と評価していた。

内藤監督に「撮ってみたい」と思える女優・山田杏奈の魅力はどのようなものなのか聞いてみた。監督は言語化しにくいと前置きをしながら「撮りたい、被写体として撮ってみたいという気持ちはオーデション時の映像を見た時から強かった」と話す。「何を考えているのか分からないけど、考えていることを知りたい、と思わせることが魅力的な俳優です。一見して何を考えているか全て分かってしまう人は撮っていても面白くない。見つめながら考えたくなる俳優に興味がある」と話す。続けて監督は「映画って見ててこの人物が何を考えてるんだろうって考えながら見るもの。あからさまに考えてることが分かったらつまらないと思う。常にどう考えてるんだろう、何を思ってるんだろうって考えながら見るもの」と自身の考えを展開。「(山田杏奈には)そう思わせる力、惹きつける力がある」と断言。それを聞いた山田は照れながら「恥ずかしい」と一言ポツリ。彼女は「顔に出ないタイプなので、よく何を考えてるか分からないって言われることが多い」と自身を振り返ってみせた。

内藤監督に本作で上手く描けたシーンを聞いてみたところ。「『ミスミソウ』では被害者であるはずの春花が段々と人間性が薄れて、サイボーグ的なものになっていくのに対して、イジメグループの加害者の方の人間性が浮かび上がってくるようになっている。人間って自分たちは被害者だという意識は受け入れやすいけど、加害者ということは中々受け入れ辛い、直視できない事実だと思う。そんな中、自身の加害者性にひどく無自覚で、無意識的に女性を差別するあるキャラクターが登場する」と話す内藤監督。以前、監督は実際にあった事件を映画化した『先生を流産させる会』を発表したとき、主犯格の人物を男性から女性に変更し、監督はミソジニストではないかというバッシングがあったという。「自分の中に無自覚で存在するかもしれない女性への歪んだ認識があるということを指摘されたことが気になっていた」と話す内藤監督。「自分自身にある無自覚な暴力性や無自覚な差別意識に向き合って作品を作らなければいけないと思っていたので、そういった人間を描くことで問題と向き合えた」と語る。

映画『ミスミソウ』は現在、全国公開中。

映画『ミスミソウ』は全国公開中


桜井賢太郎

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