「日本遺産」に認定された、石川県小松市の「石の文化」をたどる5スポットを紹介

東海ウォーカー

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2016年、石川県小松市の「珠玉と歩む物語」が、国内はもちろん海外にもPRできる“ストーリー”として「日本遺産」に認定された。「日本遺産」とは個々の文化財ではなく、地域の歴史や特色をストーリーとして捉え、地域全体の魅力として発信していこうと創設されたもので、「珠玉と歩む物語」とは2300年前から石と共に刻んできた小松の歴史や文化のことだ。今回はそんなストーリーの舞台となった、歴史を感じる石切り場から現代感覚を取り入れた新スポットまで幅広いジャンルのスポットを5つ紹介する。訪れれば、小松の石文化と日本や地域との関わり方や、「日本遺産」に選ばれた理由を知ることができるはずだ。

国会議事堂にも使われた石材を産出「観音下石切り場」

「観音下(かながそ)石切り場」は、「観音下石」「日華石(にっかせき)」と呼ばれ、石蔵や石塀など小松市内ではよく見かける石材を採掘している採石場。「観音下石」は白山の噴火により形成された凝灰岩で、色の美しさはもちろん、湿気に強く、耐火性もあることから、国会議事堂の2階壁面や、かつて「東洋一の邸宅」と称された東京都駒場公園内の旧前田侯爵邸洋館など、名だたる近代建築に使用されてきた。近年では平城宮跡の復元建物や美術彫刻、ピザ窯など、加工のしやすさや温かみのある色合いを生かしてさまざまなものに利用されているという。

高さ50メートルを超える巨壁はインパクト大! / 観音下石切り場


そんな銘石を明治時代から産出してきた「観音下石切り場」には、高さ50m以上ある巨壁がそびえ立つ。国道416号線を通れば、鋭角に切り立ったその姿を見ることも可能だ。

●観音下石切り場 / 住所:石川県小松市観音下町 / 電話:090-2126-7834(観音下石の保存会[かなんぼカフェ内])

石の里、滝ヶ原に残る産業遺産「 滝ヶ原石切り場」

同じ小松市内でも、 滝ヶ原町の石切り場から産出される「滝ヶ原石」は、堅牢で角が崩れにくく、建物の土台など建材として利用されてきた。近年では、復元された平城京朱雀門の基壇に見ることができ、また、水に強いことから温泉の浴槽やカフェの内装など使用の幅を広げているのだという。江戸時代後期から採掘が始まったといわれ、戦後には最盛期を迎え、町内には12か所もの採掘場があったとか。

なかでも「滝ヶ原石切り場」は、手作業だった江戸時代の掘削跡も残る場所。今も切り出しが行われており、洞窟のように広がる作業場はまるで秘密基地のようだ。現在は一般の人が内部に入ることはできないが、現地ガイドを予約すれば見学ができる。 石切り場の周辺も、かつての採掘場跡や明治から昭和初期に築造された石橋などが点在しており、「石の里」として栄えた歴史を今に伝えている。

【写真】まるで秘密基地のような雰囲気 / 滝ヶ原石切り場


●滝ヶ原石切り場 / 住所:小松市滝ヶ原町ウ20 / 電話:080-1962-9399(里山自然学校こまつ滝ヶ原)

滝ヶ原町の魅力を発信。「TAKIGAHARA CRAFT&STAY」

「滝ヶ原石切り場」からほど近い場所に、新しいスポットも誕生している。2020年7月にオープンした「TAKIGAHARA CRAFT&STAY(滝ケ原クラフト&ステイ)」は滝ヶ原町に残る築100年の古民家を改装し、モダンなデザイン家具を配したアーティストやクリエイターの感覚を刺激するホステル。木地師や漆職人など地元伝統工芸を体験できる工房やワーケーションができる環境が整った、新しいスタイルの宿泊施設だ。

ザハ・ハディットのソファなど、デザイン家具を配した共有スペース / TAKIGAHARA CRAFT&STAY


離れにある石蔵はシックなバーになっていて、ワインや地酒、クラフトウイスキーを楽しんだり、レコード鑑賞をすることも。ほかにも周囲には地元産の蕎麦粉を使ったガレットが名物の「TAKIGAHARA CAFE」や滝ヶ原を象徴する民家を改装した1日1組限定の「TAKIGAHARA HOUSE Airbnb」も周囲にあるので、いろいろな楽しみ方ができそうだ。日本の原風景が残る町で、仲間や家族と共に暮らすように滞在する…そんな新しい旅のスタイルを発見できるスポットとして注目を集めている。

この地に残る古民家を大胆にリノベーション / TAKIGAHARA CRAFT&STAY


●TAKIGAHARA CRAFT&STAY / 住所:石川県小松市滝ヶ原町タ-4 / 電話:電話:0761-46-5621

2019年にオープンした「九谷セラミック・ラボラトリー」

色彩鮮やかな絵付けが魅了する、石川県を代表する陶磁器、九谷焼。実はその原料である「花坂陶石」は小松市で産出されていて、九谷焼を支えてきた。「九谷セラミック・ラボラトリー」は、そんな九谷焼の陶土を作るための工場を丸ごと館内に設置した、複合型文化施設だ。

自然の景色と一体となったような建物は、隈研吾氏設計によるもの


隈研吾氏が手掛けたという建物を入ると、岩石の粉砕など陶土ができるまでの工程を見学できるほか、ろくろや絵付けなどができる体験工房もあり、九谷焼ができるまでの一連の工程を体感することが可能。現代作家の作品や窯元の陶器が並ぶギャラリーや若手作家のためのレンタル工房もあり、九谷焼の担い手を支援する場ともなっている。

九谷焼作家の作品が展示されているギャラリー / 九谷セラミック・ラボラトリー


●九谷セラミックラボラトリー / 住所:石川県小松市若杉町ア91 / 電話:0761-48-4235 / 営業時間:10:00~17:00(最終入館16:30) / 休日:水曜、年末年始 / 料金:入館料一般300円、高校生以下150円

自然が作り上げた奇石に宿る白山信仰の寺「那谷寺」

717(養老元)年に粟津温泉を発見した泰澄が創建したと伝えられる「那谷寺」。自然に宿る神々を崇拝する白山信仰の寺として歴史を刻み、山肌に出来上がった奇石や岩窟は修験者の修行場にもなっていたという。中世末期に衰退してしまったが江戸時代に加賀藩藩主・前田利常の庇護により復興。岩壁と一体化したような本殿「大悲閣」や三重塔などが修繕されながら今も残り、国の重要文化財に指定されている。

岩窟内を歩き「胎内くぐり」ができる本殿「大悲閣」 / 那谷寺


敷地内には展望台もあり、本殿のほか「奇岩遊仙境(きがんうゆせんきょう)」と呼ばれる奇石が織り成す景色を一望することも。この寺を訪れた松尾芭蕉の句碑も残るなど、時代ごとに人々を魅了してきた「那谷寺」は、石の文化が根付く小松市のパワースポットともいえる。

展望台から望む「奇岩遊仙境」。紅葉シーズンには多くの人で賑わう / 那谷寺


●那谷寺 / 住所:石川県小松市那谷町ユ122 / 電話:0761-65-2111 / 時間:参拝時間 9:15~16:00 / 料金:拝観料大人(中学生以上)600円、小学生300円※特別拝観時は大人800円

ほかにも、弥生時代の碧玉が出土した「八日市地方遺跡」や高度な構造技術により作られた「河田山古墳群の石室」など、石と共にある歴史を伝えるまざまなスポットがある、石川県小松市。2021年11月13日(土)・14日(日)には日本全国の「日本遺産」が集合する「日本遺産サミット in 小松」の開催も予定されており、石川県の新たな歴史、観光スポットとしてこれからさらに注目を集めそうだ。

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